遠山慶子: ドビュッシー&ラヴェル

 ソースは遠山慶子による1976年10月、世田谷区民会館で録音されたアナログテープマスタを24bit192KHzでリマスタリングしたもの。いわゆるADD音源で、今回はアップサンプリングはしていない。Wavpack後の総サイズは1.8GB。演奏時間は53分。

 こちらは別記事のクリプトンの試聴会でおみやげとしていただいたサンプル品。いくつかの中から選ぶことができたが、演奏者、曲名といいドンピシャで一曲目から大好きなドビュッシーの映像第一集より水の反映。最初に落ちる音から柔らかく広がる。う~ん。アナログテープのリマスタリングの認識が一気に覆された瞬間だった。
 すぐ思い出したのが、時期は同じころになるだろか1977年に録音されたアルフレッド・ブレンデル録音のものをデジタル化した音源。全然ちがうぞ。これは同じく発売されているノクターンも期待ができる。あと余談だが、使用ピアノがベーゼンドルファーと書いてあるのを見て、子どもの頃家にあったディアパーソンのグランドピアノを思い出した。けっきょくどこかの学校に寄贈されていったが、ドイツの伝統を受け継ぐあのピアノと同じ香りがするのだろうか、音色的にも懐かしさにも似た親しみやすさを感じてしまう。

 さて、ハイサンプリングならでは澄んだ音ながらトルクポテンシャルを持った音を楽しんだ後は、さっそくいつもの分析といこう。
 比較として、もはや波形レベルでみるにあたっては意味をなさないが、ミシェル・ダルベルトの2008年すみだホールにおける同曲の演奏、こちらは16bit48KHzをアップサンプリングして24bit192KHzにしたものを選択。左がそれで、すぐにわかるのが右側のハイサンプリング特有の自然なディザのようす。毎回タメイキ。


 拡大するとさらによくわかる。音は柔らかくなめらかなのだがハイサンプリングソースの波形はダイナミックである。


 そして両者をスペクトラ分析したもの。左側のアップサンプリングは高域補間なしなのでスペックどおり24KHzでスパンをおわり、あとはFUSEによる弱いディザを受け96KHzまでわずかに検出されている。右側の今回のハイサンプリングソースは80KHzまで強い。ちょっと他のハイサンプリング音源ではみられないな~。


 というのも、今度は左側に今回の音源を、右側に海外のとあるハイサンプリングソースサイトの音源を並べてみるとわかるのだが、右側は22KHzからの落ち込み、44KHzからの落ち込みが曲全体を通じて観測される。特に22KHzからの奈落は、DATなど48KHz音源でみられる折り返し歪防止のための手前からカットフィルターをかけた結果と非常に似て急峻なものとなっている。これを見てしまうと比較に使ったこの海外のものはハイサンプリング音源とはいえ、ちょっと録音から疑ってしまう。一方、クリプトンのHQM音源はかなりいいんでは?とおもう。